鉄道トレンドに関する研究や調査を行う機関「鉄道トレンド総研」は、306人の男女を対象に「リニア中央新幹線」について調査した。当初目標としていた2027年の開業を断念したリニア、その必要性を改めて聞いた。
調査概要
調査対象者 :全国/男女/10~70代
調査期間 :2024年6月2日~3日
サンプル数 :306人
調査方法 :インターネット調査
TOPICS
- リニア中央新幹線について「必要だ」と回答した人は33.3%だった。3人に1人が必要性を感じていることがわかった。
- 一方で、リニア中央新幹線について「必要ない」と回答した人は24.5%、「わからない」と回答した人は42.2%だった。
- 「必要だ」と回答した人は「移動時間短縮」「経済発展」などを、「必要ない」と回答した人は「自然破壊」「費用対効果」などのキーワードをそれぞれ挙げた。
リニアが「必要だ」と回答した人は33.3%、「必要ない」は24.5%
東京-名古屋間を約40分、東京-大阪間を約1時間で結ぶリニア中央新幹線。工事の遅れなどで、今だ開業時期がはっきりしないのが現状だ。そこで「リニア中央新幹線は必要だと思いますか」とアンケート調査を行った。
その結果「必要だ」と回答した人は33.3%で、3人に1人が必要性を感じていることがわかった。「必要ない」と回答した人は24.5%で4人に1人という割合だった。また「わからない」と回答した人は42.2%で、半数近くにのぼった。
「必要派」は「移動時間短縮」「経済発展」に期待
リニア中央新幹線が「必要だ」と回答した人に理由を聞いた。キーワードを抽出すると「移動時間短縮」「経済発展」「技術進化」「災害対策」「代替交通手段」の5つが浮かび上がってきた。主なコメントを紹介する。
「移動の時間短縮、選択肢が増えることは暮らしを豊かにすると思うから」(男性/東京都/40代)
「大都市間の移動時間を大幅に短縮し、経済活動の効率化と地域間交流を促進できる」(男性/栃木県/40代)
「ここまで計画を進めておいて、無くしてしまう方が損失が大きいと考える。今後の技術の発展のためにも、開発と運営を成功させて欲しい」(男性/大阪府/40代)
「自然災害などのリスク考えると大都市圏の移動手段は複数あると安心」(男性/奈良県/50代)
などの回答が集まった。
「不要派」は「自然破壊」「費用対効果」に疑問
続いて「必要ない」と回答した人に理由を聞いた。キーワードを抽出すると「新幹線」「自然破壊」「費用対効果」「人口減少」の4つが浮かび上がってきた。主なコメントを紹介する。
「東海道新幹線がすでにあるので不要」(男性/東京都/40代)
「水源が枯渇すると言われているので。日本は水資源が豊富で、美味しい。水は日本の宝だ」(女性/岡山県/40代)
「あまりにも費用がかかり過ぎるから。現在の新幹線を路盤を整備して、車両もさらに改良・整備するほうが、よほど安上がりで現実的」(男性/長崎県/50代)
「これから人口が減少していくし、自然を破壊してまで作る必要はない」(女性/愛知県/30代)
などの回答が集まった。
一番多かったは「わからない」で42.2%
続いて「わからない」と回答した人のコメントをいくつか紹介する。
「長距離の移動をほとんどしないので、必要性は感じない。新幹線が止まった際に、リニアという選択肢があると便利なのかもしれないとは思う」(女性/埼玉県/40代)
「移動時間の短縮等の利点があるのは良いと思いますが、開業の延期もあり、本当に実現するのか疑問に感じる」(男性/愛媛県/40代)
「自分が住んでいる地域から遠く、利用する可能性が低いため、あまり考えたことがない」(女性/大阪府/50代)
などの回答が集まった。
鉄道トレンド総研所長・東香名子の分析コメント
時速500キロという高速で、東京〜名古屋・大阪を結ぶ計画のリニア中央新幹線。工事の遅れにより、計画していた2027年の開業を断念し、遅くとも2034年以降になると言われています。遅れの大きな原因とされていたのが、静岡県の川勝平太前知事の存在でした。しかし、2024年5月には新たに鈴木康友知事が就任し、やっとリニアが前に進むのではと、胸を撫で下ろした関係者は多いでしょう。
しかし、問題はそれだけではありません。静岡県以外でも工期の遅れが発生しているのも事実です。また、岐阜県では工事による井戸水の枯渇が起きるなどしており、環境破壊への懸念はリニア反対派のひとつの根拠となっています。
今回調査したなかで、3人に1人がリニアを必要だと言っていることがわかりました。国土交通省によれば、品川~名古屋間のリニア開業に伴う経済効果(50年間)は約10.7兆円と試算されています。人の流れが活発になり、停滞する日本経済への起爆剤になることに期待したいところです。また、ここ数年は台風や大雨などで東海道新幹線の見合わせが増えており、代替手段としてリニアに期待される声も増えているのも事実です。
今回の調査では「わからない」と回答した人が最も多く、42.2%と半数近くもいました。リニアが通る場所に住んでいる人、ビジネスなどで利用予定がある人以外、大きな関心ごとではないとも考えられます。