鉄道トレンドに関する研究や調査を行う機関「鉄道トレンド総研」は、302人の男女を対象に「手荷物検査」について調査した。安心・安全に電車を利用したいと願う人の本音が浮き彫りとなった。
調査概要
調査対象者 :全国/男女/10~70代
調査期間 :2023年7月23日~24日
サンプル数 :302人
調査方法 :インターネット調査
TOPICS
- 電車に乗る前の手荷物検査について「必要だ」と回答した人は37.4%だった。
- 一方で、電車に乗る前の手荷物検査が「必要ない」と回答した人は62.6%で、多数派だった。
- 必要だと回答した人は「事件」「安全」「テロ」「危険物」を理由に、必要ないと回答した人は、「時間がかかる」「不可能」「利便性」「混雑」を理由とした人が多かった。
電車に乗る前の手荷物検査「必要ない」が62.6%
近年、電車内での刃物や危険物を伴う殺傷事件が増えている。これ以上凶悪な事件が起こらないように、飛行機のように「荷物検査をした方がいいのでは」という声が聞かれるようになってきた。
そこで「電車に乗るとき、手荷物検査は必要だと思いますか?」という調査をした。すると「必要だ」と回答したのは37.4%と、4割近くに登った。一方で「必要ない」と回答した人は62.6%で、多数派だった。
必要だと思う人「テロや事件を未然に防いでほしい」
電車の手荷物検査を「必要だ」と回答した人に理由を聞くと、「事件」「安全」「テロ」「危険物」と4つのキーワードが浮かび上がってきた。
「物騒な事件が多いから」(男性/東京都/50代)
「新幹線などの長時間ドアを開けることができない場合、金属探知機で検査をして、安全面を高めるべき」(女性/愛知県/50代)
「地下鉄サリン事件など、危険なテロが起きるのが怖いため」(女性/愛知県/30代)
「飛行機と同じで、走り出してしまえば完全密室。距離の長い特急や新幹線は、改札口に危険物探知機があると安心だと思います」(女性/神奈川県/40代)などの声が挙がった。
必要ないと思う人「時間がかかり、現実的ではない」
続いて、多数派である「必要ない」と回答した人の理由を紹介する。キーワードを抽出すると、「時間がかかる」「不可能」「利便性」「混雑」の4つが浮かび上がってきた。
「全員の荷物検査をやっていると時間がかかる」(女性/富山県/40代)
「新幹線は可能かもしれないが、その他は利便性を考えると不可能としか思えない」(女性/埼玉県/50代)
「飛行機とは違って、電車は身近な公共交通機関なので、毎回手荷物検査をするのは現実的ではない」(女性/東京都/30代)
「ただでさえ通勤通学の時間帯は混雑するので余計な手間だと思う。やるとしたら人件費が余計にかかる」(男性/群馬県/50代)
「プライバシー侵害だ」(男性/神奈川県/50代)などの声が挙がった。
鉄道トレンド総研所長・東香名子の分析コメント
ここ数年、列車内のテロ事件や、殺傷事件が頻繁に起きています。記憶に新しいのが2021年、京王線車内で男が刃物で乗客を切りつけて放火し、18人が重軽傷を負いました。同じ年には、小田急線車内で男が牛刀を振り回し、乗客10人を負傷させています。
通勤通学で利用する電車だけでなく、新幹線でもこうした事件は起きています。2018年には、東海道新幹線で刃物を持った男が乗客を切りつけ、1人が死亡、2人が重傷を負いました。2015年にも東海道新幹線で焼身自殺が起こり、巻き添えとなった女性が死亡しました。
こうした恐ろしいニュースが聞かれるたびに、乗客たちの「安心して利用したい」という声は高まる一方です。「列車に乗る時にも手荷物検査をするべきだ」と主張する人が後をたちません。今回実施した調査では「必要だ」と回答した人は37.4%でした。しかしながら、多数派は「必要ない」と考える人で、62.6%でした。多くの乗客が利用する電車で荷物検査を実施すると、かなりの時間がかかるのは想像に難くありません。「現実的ではない」と考える人が多かったようです。
ただ「必要ない」と回答した人の中には、「在来線は必要ないが、新幹線や特急など、乗車時間が長い列車では採用してもいいのでは」という意見の人も複数見られました。飛行機のような厳密なシステムまでいかずとも、時間がかからずに、危険物を一瞬で検知できるようなシステムが改札口にあれば、乗客から大いに歓迎されるでしょう。鉄道会社の安全への取り組みの進化に期待したいところです。